農地売買のやり方と注意点大公開。売買物件がもし農地だったら
今日は農地の売買について。
実は今、土地の登記簿上の地目が「田」の不動産売買取引のお手伝いをさせてもらっているんです。
3月7日にようやく残金決済をむかえ晴れて所有権移転となります。
今回のお取引は、地目が「田」なので、いわゆる「農地」に該当します。
みなさん、耳にしたこともあるかもしれませんが、田んぼや畑といった農地は農地法という法律で不動産取引が制限されています。
ということで今回は、地目が「農地」である不動産の、売買の方法と注意点についてお話します。
- 地目「農地」の不動産の売買のための「農地転用」
- 売買のためには農地法5条許可申請
- 農地所有者が農地を農地以外に変更したい場合は農地法第4条手続き
- 農地売買は注意点満載なので不動産屋と綿密に打ち合わせてから売買しましょう
地目「農地」の不動産の売買のための「農地転用」
じゃあ農地って農家同士じゃなくても売買することってできるの?
と思われる方もいますよね。
そうです、農地は農家じゃない一般の方との間で売買をすることができるんです。
「農地転用」と言われる手続き行い、知事や農業委員会に届け出たり、許可を受けることができれば、農地を宅地などの農地以外の地目に変更をすることができるのです。
農地転用が出来れば、無事農家でない方でも取得することが可能となるのです。
つまり農地である不動産を農地以外の地目に転用することで売買が可能となり、その土地に家やアパートやマンションなどを建てることができるんです。
売買のためには農地法5条許可申請
農地転用とありますが、農地転用にはいくつか種類があるんですよ。
今回の僕がお手伝いしている場合のように、その不動産を売買目的で農地転用を行う場合、基本的には「農地法第5条許可・届出」の手続きをすることになります。
つまり、農地を売買したい場合は、この農地法第5条許可・届出の手続きを行い、無事に農地以外の地目に転用できれば、晴れて売買や賃貸などの不動産取引を行うことができるのです。
今回の農地売買は、この農地法第5条届出をしたうえで農地転用をし、地目を農地の畑から宅地に変更して売買しているのです。
「届出?」
「許可じゃないの?」
市街化区域内の農地転用であれば許可出なく届出でOK
農地法第5条でも「許可」なのか、それとも「届出」なのか、2つのやり方があります。
これはその農地が都市計画法に定める「市街化区域内」なのか、それとも同じく都市計画法の「市街化調整区域内」なのかにより、やり方が変わります。
- 市街化調整区域の農地であれば許可(市街化を抑制する区域内なので、少し手続きが難しいのですね)
- 市街化区域内の農地であれば届出(より簡単に農地転用できる)
となります。
農地転用から売買(所有権移転)の流れ
農地法第5条手続きの具体的な流れは下記のようになります。
- 売買条件の合意
- 不動産売買契約(農地転用が出来なかったら白紙解約する特約をつけた停止条件付の不動産売買契約にする方法が一般的です)
- 農地転用の申請(売主・買主共同で申請)
- 農地転用手続き完了
- 残金決済・農地転用完了書類を付して所有権移転
上記のような流れとなります。
ここで注意してほしいのが、2.の売買契約の条件に、「停止条件付契約とする特約」を付けた方がいいということ。
市街化区域内の農地であれば農地転用は届出の手続きで簡単に完了します。
でも農地はやはり難しいと言われるだけあって、農地は様々な制限があり中には簡単に転用できない農地も。
そのため、不動産売買契約を締結後、農地転用の手続きを進めてみたはいいけれど、仮に農地転用許可が下りずに不動産売買契約の目的が達成できないなんていう可能性も絶対にないとは言い切れませんよね。
そのような場合には、後々トラブルに発展してしまう可能性もあるので、万が一農地転用が出来なかったら、不動産売買契約自体を何もなかった状態にする、つまり白紙解約にする、という内容の停止条件付の売買契約とすることが望ましいです。
農地転用手続きは行政書士に依頼するのが一般的
ここまで農地転用のことを書いてきましたが、「自分でやるのは大変そう」とお感じの方も多いはず。
農地転用の手続きは、不動産売買の売主・買主が共同で申請しなければなりませんし、県知事や農業委員会に対して申請も大変そうですよね?
そこで行政書士の出番です。
行政書士とは
行政書士って名前は聞いたことあっても、どんなことをしているのかご存知ですか?
行政書士は、行政書士法という国家資格に基づいて、官公庁(例えば市役所など)への提出書類や、権利義務・事実証明に関しての書類作成、提出手続きなどをする専門家なのです。
こういった農地転用に係る小難しい申請書類の作成や申請の代行をしてくれるのが行政書士。
行政書士に農地転用を依頼しておけば、取引の当事者は書類に署名捺印をするだけでいいのです。
当然費用は数万円程度かかります。
でも仮に自分で農地転用の手続きをやったとして、農地転用が万が一にも失敗してしまい、その不動産取引自体が不成立になってしまうというリスクと費用を比べてみれば、行政書士に委任するメリットの方が大きくないですか。
農地所有者が農地を農地以外に変更したい場合は農地法第4条手続き
これまで、売買などの不動産取引をする前提に農地転用する場合の5条手続きについてお話しました。
それとは別に、もともとの農地の所有者が、自分の農地を農地以外の地目に変更したいなんていう場合もあります。
その場合には、農地法第4条の手続きを行うことになります。
5条とか4条とは法律の条文を書かれても・・・ですよね。。。
これは不動産取引が目的なのではなくて、農地所有者自身が農地を農地以外の目的で利用したいという場合のための農地転用手続きです。
農地にご家族の住宅を建てたいとい場合や、駐車場にしたい場合、資材置き場にしたい場合など目的は人それぞれ。
「農地のままにしておいても使ってないし税金ばかりかかって困ってしまう」
こんなお悩みを抱えた農家の方って結構多いと思うので、そういう土地があって何とかしたいなというときに農地法第4条手続きの出番なんです。
この農地法第4条の場合は、届出でも許可でも、その申請先は農業委員会です。
ここが第5条とは少し違うところですね。
農地売買は注意点満載なので不動産屋と綿密に打ち合わせてから売買しましょう
これまでにお話した通り、地目が農地の不動産の売買はかなりやっかいです。
でも、農地法で定められた農地転用という救済措置があるので、農地であったとしても売買は可能です。
※農地によっては農家以外の方には売却できないような農地もあります。とくに田舎の農地は要注意。
ただ、農地は農地法の制限を強く受けた特殊な不動産。
非常に難しい問題が次々に出てくることもあったりします。
だからこそ、農地を売りたいという方も、反対に買いたい土地の地目が農地だったという方も、農地を売買する際の注意点や手続きなんかについて自分でも調べてみましょうね。
そして事前にしっかり不動産屋と打ち合わせをして地目が農地の不動産の売買をしましょうね。
そのときには、農地転用が仮にできなかったときのリスクヘッジも忘れずに!
必ず不動産売買契約書の特約に農地転用できなかった時の白紙解約条項を入れてもらうようにお願いしましょうね!