【事故物件】告知義務はいつまで?気になる疑問調べてみました

突然ですが、今、弊社では心理的瑕疵物件(その物件内で事件・事故でお亡くなりになられた物件)を販売しています。

いわゆる事故物件です。

 

テレビやインターネットでよく事故物件についての下記のような通説を目にします。

 

事故物件は事件・事故が起こった後1度入居すれば、その次からは告知義務がない

 

これって本当なんでしょうか?

 

今日はこの事故物件の告知義務についてお話します。

 

 

事故物件とは

不動産の賃貸や売買で、時々事故物件という言葉を聞きますね。

この事故物件っていったい何のことなんでしょうかね?

 

事故物件とは・・・

その物件の敷地内や室内で、事件や事故に巻き込まれて人が亡くなった履歴のある不動産

 

のことを言います。

 

「心理的瑕疵(かし)」の対象

不動産の売買でも賃貸でも、不動産取引には、売主さんや貸主さんが瑕疵担保責任(瑕疵担保責任)を負います。

これは不動産の法律の宅地建物取引業法で定められているのです。

 

瑕疵担保責任とは隠れた欠陥があった場合に、不動産の買主さんや借主さんがその隠れた欠陥・事実を知っていたら取引をしなかったという場合に売主さん・貸主さんが責任を負わなければならないのです。

具体的には契約解除損害賠償請求などをすることができるのです。

 

事故物件は瑕疵担保責任のうち、「心理的瑕疵」の対象となり、その事件事故があった事実を告げずに不動産取引をした後に、買主さん・借主さんが事実を知った場合、損害賠償請求を起こされる可能性があるのです。

 

当然、その物件を仲介した不動産会社も、事実を知っていて告げなかったような場合は、損害賠償請求の対象となりうるのです。

 

不動産市場における事故物件の特徴

今でこそ全国の事故物件情報を集めた事故物件サイト「大島てる」で事故物件という存在がメジャーになりましたよね。

 

ここで事故物件が不動産市場ではどのような特徴を持っているかをご紹介します。

 

売買でも賃貸でも事故物件の特徴は同じ

  • 売買価格・家賃が相場に比べて30~60%程度安い*1
  • 広告や物件資料に「告知事項あり」と書かれている場合が多い*2
  • 部屋や建物共用部分などにお札などが貼られていることがある
  • 室内が床を中心にとてもキレイにリフォームされている*3

 

事故物件はこのような特徴を持っています。

あくまで主な特徴なので、上記に該当しないような事故物件もあるかと思いますし、反対に上記に該当しても事故物件ではないものもあるかと思います。

 

事故物件の入居者が1回入れ替わったら告知しなくてよくなるという話は本当?

みなさん、ドラマなどのテレビ番組やインターネットでこんな情報を見たり聞いたりしたことはありませんか?

 

事故物件は、事件事故が起こった後にその物件(部屋)で入居者が一度入れ替わったら、二度目の入居者からは告知をしなくていい

 

僕も昨年あたり、不動産屋が事故物件を案内するときにその不動産屋がこんなことを言って事故物件であることを告知しなかったという内容の民放の怖い話系のドラマを見ました。

 

事件事故が起きてから2度目の入居者には告知義務がないなんて本当なんでしょうかね?

 

平成19年8月東京地裁の判例が通説となった?

このような2度目の入居者に告知義務がないという通説は、なにか根拠があったのでしょうか。

 

調べてみると下記のような判例が出たことがありました。

 

平成19年8月10日の東京地裁の判例

本件物件が都市部のワンルームであり、近所つきあいが希薄であることを考慮すれば、本件事件後最初の賃借人には本件事件を告知する義務はあるが、次の賃借人には特段の事情がない限り告知する義務はない。よって、賃貸人の損害は、132万円余(事故後1年間は賃貸できず、その後2年間は従前賃料の半額しか賃貸できないとした逸失利益)であると認める。

 

おそらくこの判例がもとで、2度目以降の入居者への告知義務は無しというのが通説になったのだと考えられます。

 

平成19年8月の判例は個別事情を考慮のうえの判例である

上記により実際に2度目の入居者には事故物件であることの告知義務はないという判例が実際に出ています。

 

ただしここで注意してもらいたいのが、この判例の舞台である不動産が

  • 近所づきあいが希薄な
  • 首都圏の
  • ワンルーム

 

であったこと。

さらに事件発生後の最初の入居者が2年ほどその物件に住んだということ。

 

確かに東京などの首都圏のワンルームは入れ替わりも早いですし、隣にどんな人が住んでいるかも知らないなんてことは往々にしてありますよね。

この判例はそのような特徴を持つ首都圏のワンルームが事件の舞台であったからこそ出された判例だと考えられます。

 

反対に近所づきあいが濃密な地方のファミリータイプ物件であったら同様の判決はでなかったんではないでしょうか。

 

事故物件の告知義務はいつまで?

では事故物件の告知義務はいつまであるのか?

 

実は、正解がないと答えるのが正解なのです。

 

この心理的瑕疵物件の取り扱いについては、ガイドラインが定められていないのです。

なのでこの事故物件の告知義務については、正直なところ不動産会社の匙加減次第という非常にあいまいなものになっています。

 

ただし、本来は不動産取引当事者の売主さんや貸主さんは、隠れたる瑕疵を担保すべき「瑕疵担保責任」を負っているわけなので、そのような事件事故があったことを知っている以上は告知をしなければならないのです。

 

売買の場合の告知義務の期間

この記事は主に不動産賃貸取引のことを中心に書いてきましたが、不動産の売買でも当然事故物件というものは存在します。

 

売買の場合は、自分の所有物となるので、賃貸以上にシビアになりますよね。

 

過去の例を見ると10年以上前の事件事故について、売主さんに瑕疵担保責任を認めた判例も見受けられたりします。

 

事故物件であることの告知をしない不動産業者に注意

先ほど書いたように、2度目以降の入居者には事故物件であることの告知をしなくてもよいという通説が不動産業界の中にも広まっています。

 

そして、2度目以降の入居者への事故物件の告知については、不動産会社の担当者の匙加減になってしまっている事実もあります。

 

以前は下記のようなロジックで事故物件を隠ぺいする不動産業者もいました。

  1. 自社の社員などを借主として事故物件を契約させる
  2. 一定期間を経過後に賃貸借契約を解約
  3. そうするとその時点で1回転完了
  4. 次の入居者は2度目以降の入居者となるため、告知義務がなくなる
  5. 通常物件として募集する

 

今は事故物件も名が知られてきたのとインターネットである程度情報が調べられるようになったので、このようなやり方をしている不動産業者がいるかは不明です。

あくまで不明です。

 

事故物件の見分け方は

事故物件はインターネットである程度過去にどのような事件事故があったかの情報を調べることができます。

 

また「大島てる」に載っている物件もあります。

 

不動産屋に事故物件でないか単刀直入に聞きましょう

しかし、それでもわからない場合は、不動産屋の担当者に

「この物件、いわくつきの物件ではないですか?」

「過去に敷地内や室内で人が亡くなったりしていませんか?」

 

と単刀直入に聞いてしまいましょう。

 

仮に事故物件だったとして、もし不動産屋がこの質問に対して「NO」といった場合、担当者が知っていて虚偽の事実を告げた場合、または調べればわかったような場合には損害賠償請求をすることも可能だと思われます。

 

最後に

事故物件の告知義務について今日はお話しました。

たまたま、弊社でも今、事故物件の築浅中古住宅を売却を依頼されているので、自分でも色々と調べてみました。

 

事故物件は不動産業者にとっても取り扱いが難しいのが本音。

 

でも仮に不動産投資家の方が自分の持っている不動産で事件事故が起こってしまい、心理的瑕疵物件化してしまった場合は、流布している通説を鵜呑みにせず、しっかりとリスクヘッジを考えた運用方法を実践しましょう。

 

また不動産を買いたい方も借りたい方も、後で事故物件だったなんてことがないように、不動産屋にしっかりと確認をしたうえで自分の購入または借りる物件を決めましょうね。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

*1:事件事故の内容や売買の場合は処分のしやすさや売主さんの事情によってパーセンテージは上記数値より異なることもあります

*2:不動産広告には告知事項の内容を説明する必要はないため、「告知事項あり」とだけ書かれているものが多い

*3:床に体液が流れ床を張り替えざるを得ない場合